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総額表示の国と、レジで税が増える国

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東京とマドリードは値札がそのまま支払額。ニューヨークはレジで8.875%が乗る。総額から税を割り戻す計算と、チップの基準額で会計がいくら動くか。

同じ値札、四つの会計

四つの都市の棚に同じ数字を貼って、カードがいくら引き落とされるかを見る。東京では値札が1,000円で、引き落とされるのも1,000円。マドリードでは10ユーロの札で10ユーロ。リヤドでは100リヤルの札で100リヤル。ニューヨークだけは10ドルの札で、10ドル89セントが引き落とされる。

四つのうち三つは、値札の中にすでに税が入っている。残る一つは入っていない。これは端数の話ではなく、価格とは何かについての二つの考え方の差だ。一方は「客が手放す金額」を価格と呼び、もう一方は「売り手の取り分」を価格と呼んで、政府の取り分はその街で売っている誰かがレジで足す。

100 100 100 108.88 東京 10% マドリード 21% リヤド 15% ニューヨーク 8.875% 税 9.09 税 17.36 税 13.04 税 8.88
同じ値札、四つの取引。濃い帯が税額。棒が値札を超えるのはニューヨークだけで、売り手が100をまるごと手にするのもそこだけ。

棒の高さではなく帯の厚みを見てほしい。マドリードは同じ値札から東京のほぼ二倍の税を集めているのに、客が払う数字はどちらも同じだ。総額表示の国では、税率が上がったぶんは客の会計ではなく店の取り分を削る。ニューヨークの帯は四つでいちばん薄いのに、いちばん痛い。買うと決めたあとに現れる唯一の帯だからだ。

アメリカだけが違う理由

図に出てくる他の三か国は付加価値税の国だ。税率は全国で一本、決める場所も一か所で、生産の各段階で課して仕入れ分を控除していく。全国一律の税率なら全国共通の値札に刷り込めるので、法律がそう義務づけている。アメリカの小売売上税はまったく別物で、州・郡・市に加えて交通局や競技場区、観光区といった特別区がそれぞれ独自の税率と非課税品目を持つ。

結果として、一つの国の中に何千通りもの合計税率が並ぶ。ニューヨーク州が4%、ニューヨーク市が4.5%、広域交通の付加税が0.375%——足して8.875%、図の数字はここから来ている。車で九十分も走れば数字は変わる。アラスカ・デラウェア・モンタナ・ニューハンプシャー・オレゴンの五州には州の売上税そのものがない(アラスカでは地方自治体が独自に課している)。

だから全国同一価格を打ち出すチェーンは、税込の値札を刷れない。刷れば税率の高い街で損を出すか、低い街で取りすぎることになる。値札は税抜で、残りはレジがやる。旅行者に非課税の線引きが恣意的に見えるのも同じ理由で、多くの州は調理していない食品を非課税にする一方、温めた瞬間に課税する。自分のかごがどちら側に落ちるかは、値札を見ても分からない。

総額表示も自動的に生まれたわけではなく、書かれたから存在する。日本では特別措置法が長く表示義務を止めていて、それが2021年3月末で切れたことで総額表示が再び義務になった。いまの棚札で支払総額がいちばん大きな字で載っているのはそのためだ。スペインの消費者ルールは、客に示す価格は実際に支払う価格——IVA込み——でなければならないと定めていて、あのPVPという表示はその意味だ。サウジアラビアも広告価格にVATを含めることを求めている。どの国でも、誰かが立法した結果にすぎない。

総額から税を割り戻す

税が価格の中に入ってしまうと、取り出すところで間違える人が多い。スペインの10ユーロの商品にはIVAが21%かかっている。その中の税額は2.10ユーロではない。1.74ユーロだ。

税率は総額ではなく税抜額に対して定義されているからだ。税を足すときは税抜に1+税率を掛ける(8.26 × 1.21 = 10.00)。だから取り出すときは掛けるのではなく割る。税抜 = 総額 ÷ 1.21 = 8.26、税額はその差で1.74。実際に払った金額に対する割合で書けば、税は21%ではなく21 ÷ 121、つまり17.36%になる。

標準税率支払額に占める税の割合主な国
5%4.76%アラブ首長国連邦
8%7.41%日本の軽減税率
10%9.09%日本・韓国・オーストラリア
15%13.04%サウジアラビア・ニュージーランド
16%13.79%メキシコ
19%15.97%ドイツ
20%16.67%イギリス・フランス
21%17.36%スペイン・オランダ
25%20.00%スウェーデン

覚える価値があるのは最後の行で、これだけは割り切れる。税率25%なら、手放した金額のきっかり五分の一が税だ。他の行はどれも表示税率より下に落ち、税率が上がるほど落差は広がる。5%の税は総額の四分七五を隠し、25%の税は二割まるごとを隠す。これは同じ幅の値引きと値上げが打ち消し合わないのと同じ非対称で、パーセントは打ち消し合わないで分解したものと同じ仕組みだ。

実務に落とすとこうなる。見積もりを出すフリーランス、領収書を突き合わせる経理、免税手続の金額を確かめる旅行者——どの場面でも必要なのは割り算であって掛け算ではない。21%の請求書で逆をやると、税額をちょうど税額の21%だけ過大に見積もることになる。

税ではない層

税は、法律という裏づけがある層にすぎない。飲食や宿泊の請求書では、見た目はそっくりなのに性質がまるで違う項目が同じ場所に並ぶ。

サービス料は店が足して店が取る固定の割合で、湾岸のホテルや、どの国でも大人数の予約でよく見る。市税や観光税はホスピタリティだけを狙った地方の賦課で、ドバイのホテルの請求書がチップの話が出る前に三つの割合を並べているのはそのためだ。イタリアのコペルトは食べたものと無関係に席へかかる一人あたりの定額で、アメリカのリゾート料金や施設料も、比較したはずの一泊料金のあとから同じように現れる。

そして最後にチップがある。この一覧で唯一、法的には任意で文化的には必須という層で、しかもそれが当てはまる国は四つのうち一つだけだ。日本ではチップの習慣がなく、現金を差し出すのは親切というより軽い社交上の困りごとになる。旅館ならサービス料が代わりに載る。スペインなら小銭か端数の切り上げが普通で、20%ではない。湾岸ではサービス料がチップの役を兼ね、それ以上は切り上げの仕草だ。アメリカでは食事代の四分の一がチップで、決済端末は味を見る前にその割合を提案してくる。

割合は掛け算、効くのは「何に掛けるか」

積み上がる料率の順番を気にする人は多い。サービス料が先か、税が先か。順に掛かる割合どうしなら、順番は効かない。10%のサービス料のあとに5%のVATなら100 × 1.10 × 1.05 = 115.50、逆順でも100 × 1.05 × 1.10 = 115.50。掛け算は交換できるので、順番が変えるのは明細の見え方だけで合計ではない。

合計を変えるのは、その割合を何に掛けるかという選択のほうだ。そこだけは掛け算ではなく足し算だからで、アメリカのチップがいちばん分かりやすい。慣習では、チップは税抜の小計にかける。税は店の取り分ではないからだ。ところが決済端末は、慣習ではなく計算しやすいほうを選んで、提案する割合をたいてい税込の合計にかける。

チップの基準額チップ100ドルの食事の総額
税抜100.00の20%20.00128.88
税込108.88の20%21.78130.66
税込108.88の25%27.22136.10

上の二行の差は100ドルの食事で1.78ドル、1.4%——税の上に乗ったチップぶんだ。小さく、確かにあり、見ようとしなければまったく見えない。実際に金額を動かすのは三行目で、端末の初期提案が、それが代弁しているはずの慣習より速く上振れしてきた結果だ。昔ながらの礼儀正しい答えと画面のまんなかのボタンの間には7.22ドルの開きがあり、その画面は一秒ほどで押されるように設計されている。店員が見ている前で。

持ち帰る三つの習慣

ほとんどの場面はこれで足りる。国境をまたいで値段を比べるとき——東京のカメラとシカゴの同じカメラ、マドリードのホテルとマイアミのホテル——結論を出す前に、両方の数字が税込かどうかを確かめる。表示方式の21%差は、実売価格の10%差を軽く飲み込む。為替は通貨換算が引き受けるが、税の表示方式だけは代わりに見てくれない。

自分が見積もりを出す側なら、その数字が線のどちら側かを明記する。契約書の「税別」という三文字は実際に働いているし、それが書かれていないことも同じだけ働く——相手が逆に受け取ったときに。そして税が入った領収書を読むときは、割る。消費税計算機が両方向を一画面に置いているのはまさにそのためで、請求書に三つの割合が同時に載っているときの積み上げ計算にはパーセント計算機がある。

どちらの方式が正しいという話ではない。総額表示は客にやさしく、そのぶん国家の取り分の大きさを客から隠す。レジで足す方式は、レシートごとに刷られた小さな公民の授業であり、レジ待ちの列ごとの小さな苛立ちでもある。大事なのは、いま自分がどの国のルールの中に立っているかを知っていることと、値札と総額の差が暗算できる算数にすぎないと知っていることだ。

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