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BMI 25は肥満?国によって違う基準の正体

· 読了目安 6分

計算式は世界共通なのに、日本は25で肥満、WHOは30、韓国は23で肥満前段階。基準が分かれた理由と、標準体重22の由来、自分に合う物差しの選び方。

同じ数字、五つの判定

身長170cm・体重68kgの人を考えます。BMIは 68 ÷ 1.70² = 23.5。日本肥満学会の表に当てれば「普通体重」、WHOの国際基準でも「普通」です。ところが同じ数字を韓国の健診票に載せると「肥満前段階」、インドの診療所なら「過体重」。アメリカのCDCの表では普通体重ですが、アメリカ糖尿病学会はアジア系ならこの時点で糖尿病のスクリーニングを勧めます。

体は何も変わっていません。変わったのは物差しの方です。BMIは計算式が世界中で同じなのに意味が国ごとに違う珍しい医学指標で、しかも大半の計算機はどの物差しを使ったか教えてくれません。

18.5 23 25 27.5 30 35 40 日本(日本肥満学会) WHO 国際基準 WHO アジア向け行動点 韓国(大韓肥満学会) 中国(WGOC) インド(2009年合意) 23.5 26.0
同じ軸に六本の物差し。青が低体重、緑が普通、黄色が注意帯、橙が過体重、赤が肥満。破線は170cmの人が68kg(BMI 23.5)と75kg(BMI 26.0)のとき。

破線を上から下へたどってください。23.5では三行で緑、残る三行で黄か橙。26.0になるとWHOでは「過体重」止まりですが、日本・韓国・インドではもう「肥満」です。BMIの差は2.5ポイントなのに、ラベルは一段どころか二段変わります。

日本の「25で肥満」はWHOより5ポイント厳しい

日本の基準はここが独特です。WHOが30以上を肥満と呼ぶのに対し、日本肥満学会は25以上を肥満(1度)とし、30・35・40で2度〜4度に刻みます。つまり国際基準で「過体重」と呼ばれる25〜29.9の帯が、日本ではまるごと「肥満」です。海外の計算機で「overweight」と出て日本の健診で「肥満」と書かれるのは、この定義の差であって測り直す必要はありません。

ただし日本の枝分かれはもう一つあります。BMI 25以上は「肥満」ですが、それだけでは病気ではない。肥満に起因する健康障害(2型糖尿病・脂質異常症・高血圧・脂肪肝など)が一つ以上あるか、内臓脂肪の蓄積がある場合に初めて「肥満症」と診断され、治療の対象になります。肥満は体格の記述、肥満症は病名——健診票の「肥満(1度)」を見て慌てる前に、同じ紙の血糖と中性脂肪の欄を見るのが順番です。

49.5kg 150cm 56.3kg 160cm 63.6kg 170cm 71.3kg 180cm
日本の「標準体重」はBMI 22で定義され、身長(m)² × 22 で求めます。22は日本人の疾病合併率が最も低かったBMIとして1980年代の研究から採られた値です。

もう一つ日本固有なのが「標準体重=身長(m)²×22」という式です。170cmなら 1.7 × 1.7 × 22 = 63.6kg。WHOの表には「理想」の一点はなく18.5〜24.9の幅しかありませんが、日本の健診はこの一点からの乖離率(肥満度)も併記します。数字が一人歩きしやすいところなので、22は「最も病気が少なかった平均」であって、全員がそこへ寄せるべき目標ではないことは押さえておきたいところです。

25と30はどこから来たか

WHOの区切り——18.5・25・30——は1990年代に、主に欧米のコホートの死亡率・罹患率曲線から決まりました。丸い数字なのは意図的です。背後のリスク曲線はなめらかで、どこで切っても便宜上の線にしかならないので、覚えやすく、かつその集団で疾病リスクが立ち上がり始めるあたりを選んだのです。

問題はこの表をアジアに持ち込んだときに露わになりました。東アジア・南アジアの成人は、同じBMIでもヨーロッパ系より体脂肪率が3〜5ポイント高く、しかも腹部に集まりやすい。2型糖尿病や高血圧が、国際基準ではまだ「普通」のBMI帯で顕れていました。25で線を引いた日本人・インド人の集団は「問題なし」と言われ続けながら糖尿病率を伸ばしていたのです。

2004年のWHOの折衷案——23と27.5

2004年、WHOの専門家会合がアジアのデータを総括してランセット誌に発表した結論は、歯切れは悪いが正直なものでした。リスクが早く始まるのは確かだが、その始点は中国・インド・日本で同じではない。そこで国際分類は世界共通の参照点として残し、アジア系集団には23と27.5を「公衆衛生上の行動点」として追加しました。過体重・肥満という言葉の定義は変えず、保健サービスが動き出す目安を下げたのです。

20 23 25 27.5 30 35 40 ヨーロッパ系 アジア系(WHO 2004)
WHO自身が示した対応関係。ヨーロッパ系がBMI 25・30で達する心血管・代謝リスクに、アジア系はおよそ23・27.5で達する。

その後、各国は独自の道を選びました。韓国の大韓肥満学会は23を肥満前段階、25を1段階肥満として、WHOより丸々5ポイント低く線を引きました。中国の作業部会は24と28。インドの2009年合意は23と25で、これが最も低い線です。シンガポール保健振興庁は23と27.5をそのまま「中リスク」「高リスク」の線に採用しています。日本は25で「肥満」と呼びつつ病名は別に立てるという、上で見た二段構えです。

同じ体が世界でどう呼ばれるか

基準170cm・68kg(BMI 23.5)170cm・75kg(BMI 26.0)
日本(日本肥満学会)普通体重肥満(1度)
WHO 国際基準普通過体重
WHO アジア向け行動点リスク上昇リスク上昇
韓国(大韓肥満学会)肥満前段階1段階肥満
中国(WGOC)普通過体重
インド(2009年)過体重肥満
米国 CDC普通過体重
米国糖尿病学会(アジア系)糖尿病検査を推奨糖尿病検査を推奨

アメリカの行には補足が要ります。米国は区切りそのものは下げていませんが、2015年にアメリカ糖尿病学会がアジア系アメリカ人の糖尿病スクリーニング開始点をBMI 25から23へ引き下げました。根拠は十年前にWHOが検討したのと同じデータです。海外在住の日本人がCDCの表で「普通体重」と言われた同じ日に、医師から空腹時血糖の検査を勧められる——どちらも正しい、ということが起きます。

本当の変数はBMIではなく体脂肪

BMIは脂肪を測ったことが一度もありません。測っているのは身長に対する体重で、健康指標になったのは「成人では平均して余分な体重=余分な脂肪」だからです。この平均が二種類の例外を隠します。筋肉の多い人は脂肪でない重さを抱えて高く出る。体格の違う集団は、違う体重で同じ脂肪を抱えて低く出る——アジアのデータが示したのが後者です。BMI 25のオランダ人とインド人は体脂肪率が5ポイント違いうるうえ、その差は代謝への害が最も大きい腹部に集中します。

だからどの学会もBMIに腹囲を添えるよう勧めますし、日本の特定健診(いわゆるメタボ健診)が体重計ではなくメジャーから始まる——男性85cm・女性90cm——のも同じ理由です。BMIは集団向けの安価なふるい分けで、腹囲と体脂肪こそがBMIが代理していた本来の問いです。

結局、どの物差しを使うべきか

正直な答えは「自分と似た人たちのために作られた物差し」です。その区切りだけが、あなたのリスクに合わせて引かれているからです。日本人なら日本肥満学会の表を、海外で暮らしていても使ってください。生物学は移住しません。逆にヨーロッパ系の人には国際基準こそ実際に適合された表です。いずれにしても、BMI 23〜25の帯は判決ではなく、腹囲を測り、四十を過ぎたら空腹時血糖を確かめる合図と読むのが実用的です。

二つの計算機があなたについて食い違うとき、争っているのはほぼ計算ではありません。あなたがどの集団の曲線に属するかを争っているのです。ここのBMI計算機は国際基準とアジア基準の帯を同じゲージに描くので、その食い違いが隠れずに見えます。次の問いが「その体は一日に何kcal使うのか」なら、それは別の推定で別の誤差を持ちます——TDEE計算機が、なぜその計算機同士も食い違うのかも含めて扱っています。

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